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1974年、広島市中区袋町の小さな洋菓子店として創業したバッケンモーツアルト(廿日市市)。今や従業員約610人、年間売上高約36億円に上り、広島を代表する洋菓子メーカーに成長した。4月には、世界的な食品品評会モンドセレクションでも初出品で入賞を果たした。洋菓子という「世界の味」を追求し、地域に届け続ける現場を追った。(樋口浩二)
チョコレートに包まれた漆黒の「ザッハトルテ」。チョコレートクリームを混ぜ込んだスポンジは、しっとりとした歯応えの後、ほんのりとした甘みとほろ苦さが広がる。同社が追い求めている食感に近づきつつある。
「ザッハ」は創業以来作り続けている看板商品の一つ。33年目を迎えた昨夏、初のリニューアルに踏み切った。初代はスポンジとチョコレートクリームを七層に重ねていた。それを生地そのものにクリームを混ぜ込む製法に変えた。「ヨーロッパの製法を手本にしたモーツアルトの味」(田上友康社長)を目指した。
チョコレートが溶け込んだ滑らかなスポンジ—。2007年3月、ドイツ製の超高速攪拌(かくはん)機を導入した。高さ約1.5メートル、直径約一メートル、容量60リットルのステンレス製。1分間に6000回転し、スポンジ生地を混ぜる。速さが劣ると乳化が進まず、生地とチョコレートが分離してしまう。
ただ、機械だけでは思うようなスポンジは作れなかった。高野将弘生産部長(29)たちは卵黄、生クリーム、チョコレートなど生地の配合比を試し続け、一カ月後、チョコレートがしっとりと溶け込んだスポンジができた。
当初は、製法の変化に気付いた一部の客から戸惑いの声も上がったが、味の変化に多くの客が納得。販売量はすぐに軌道に乗った。田上社長は、新生ザッハをモンドセレクションに出品することを決意。そして銅賞を受賞した。本場ヨーロッパで「広島発の洋菓子」が認められたのだ。
6月、オーストリアのウィーンであった授賞式。高野さんをはじめ開発、製造、流通の責任者七人が出席した。高野さんはこの時、発祥の店で本場のザッハトルテを味わった。「しっとり感などはけっして負けていなかった」
新生ザッハは、06年4月に完成した廿日市工場(廿日市市)で1日200個(ホール)を製造。県内の直営約70店舗などへ出荷している。
「現場物語」は毎週水曜日に掲載します。
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超高速で攪拌したスポンジケーキ のたねを取り出す高野さん。 新生ザッハトルテに欠かせない 工程だ ※高野将弘 |